印のスタイル

印章は長い歴史の中で洗練され、美しい一般的なスタイルができあがりました。
ここでは代表的な様式と取り上げて解説し、それに倣った作例をご紹介します。

古璽風

印章は、中国の春秋戦国時代(B.C.770-B.C.221)に官僚制度と文書行政が発達し、官吏が職権を証明するためのIDが必要となったことによって、出現しました。
 
後半の戦国時代(B.C.403-B.C.221)に作られた印章は、印文の末尾に「鉥」の文字が付く事から古銅印の中でも「古鉥(こじ)」と称されています。
 
古鉥は、白文(陰刻)では四辺の内側に口字の界線をもうけ、その中に文字を配する点、朱文(陽刻)では文字の実線を細くし、四辺の枠を太くする点が特徴的です。
 
また、古鉥は作られてから今日に至るまで2000年以上が経っており、この間に風化や腐食によって欠けや凹凸ができ、古色を帯びた味わいを持っています。この“風化の美”を参考に、意図的に線や枠を壊し、古色の味わいを付ける点も、古鉥に倣った印の大きな特徴の一つです。

≪作例≫ 

古璽「連父之璽(鉥)」

 倣作「佑毅之璽(鉥)」

「秦是」

「上□邑夫之鉥」

「肖慶」

倣作「佑毅」

倣作「川内佑毅之璽」

倣作「伯豊」

漢印風

 
春秋戦国時代に出現した印章は、秦を経てその精巧を増し、前漢時代(B.C.206-A.D.8)になって様式が確立したと言えます。漢代の印章を“漢印”と呼びます。

漢印の最大の特徴は、方寸が等しく4つに分かれ、線と線の間も等間隔であるという、“分間布白”にあります。そして、文字は四等分された正方に綺麗に収まっており、その字形は随所で左右線対称に作られています。また、その線は太さが均等でありゆるぎなく、それでいてふくよかなものです。

このように様々な部分が均等に分けられていることによって、漢印は安定した品格のある整斉美を備えています。漢印のこのような整斉美は印の一つの典型であり、篆刻の必修の範として鑑賞の対象とされています。

漢印調の作風は、品格を備えた極めてポピュラーな様式として、伝統的なスタイルの書画作品を中心に幅広く用いることができます。

 


≪作例≫
 漢印「趙遂之印」
倣作「川内佑毅」

漢瓦当風

漢代の瓦当(がとう)の様式を模したものです。
瓦当とは、家屋の屋根に用いる瓦の一部である軒瓦の先端部分に、模様や文字を刻み厄除けや招福を表したものです。中国の瓦当文化は、印と同様に戦国時代から始まり、漢代になってその様式が確立したといえます。

漢代の瓦当は、円の中心に点を設け、それを囲む形で空間に文字を当て
はめる点が特徴的です。よって文字は、円の中心に近い所は短い作りとなり、円の外周に近いところでは伸ばしたような長い作りとなります。

外周の太い枠と中心の点によって、作品全体が締まって見えます。
また、丸型ということもあって単体で用いやすいので、四角い印が合わない
作品への落款印として向いています。その場合、作品全体の趣がいつもと
少し異なって、ちょっとお洒落でユニークな装いとなります。

落款印だけでなく、封筒の裏面に押す封緘印としても用いることもできます。



≪作例≫
漢瓦当「與天毋極」
倣作「川内佑毅」

近代印人風

 中国では清朝になると、文人たちによる書画篆刻作品が隆盛を極め、日本でも中国の作風を取り入れる印人が現れました。彼らは中国古代の金石文字を多く学び、それらの様々な要素を自らの作品へ取り入れました。
 各人が独自の境地を切り開いたことによって、書画篆刻の作風は多様化することとなり、近代の印人は篆刻文化の発展に大きく貢献しました。それら近代印人の作風の特徴をそれぞれ取り入れ、若干のアレンジを加えて作成するのが近代印人風の印です。

呉譲之「譲之」

呉昌碩「蘭涯」

河井荃盧「聖氷所蔵金石文字印」

倣作「伯豊」

倣作「佑毅」

倣作「伯豊所蔵金石書画印」

オリジナルスタイル(作風やイメージに合わせて制作)

 古代文字・古銅印・近代印人のスタイルを参考とし、その要素を取り入れた上で、用途・イメージに合わせて自由に作成したものです。作品との調和を第一に考えて制作しますので、バリエーションや作風は多岐にわたります。

≪用例①≫


≪落款に用いた印≫
「伯」 3cm


≪印を使用した作品≫
  
伯豊作「行雲流水」 45×175

≪用例②≫


≪印を使用した作品≫
伯豊作「行雲流水」 50×80

 
≪落款に用いた印≫
「伯」 2.5cm

伯 豊 道 人 Hakuhou Doujin

東京学芸大学大学院 修了(教育学修士) 
・中国政府奨学金国費留学(’06〜’07)
・日展入選 3回
・全日本篆刻連盟 評議員
・謙慎書道会  評議員

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